走るのが苦手な人は存在しない
「俺、走るの苦手なんだよね…」
「私、運動音痴だから走るのもダメで…」
そんな言葉を人生どこかで聞いたことありませんか?
実はその言葉は間違っています。
勿論、陸上部やそのまた雲の上のオリンピック選手になれば、走る速度に速い・遅いの身体的・技術的の差が存在しますが、
フルマラソン完走やサブスリーであれば、ちょっとした理論を習得していけば間違いなく達成できる基準である、と断言します。
走りたいけど毎日走るのは嫌だな…と思っている人は多いと思います。
そこでまずは走る前に、ランニングに関する理論を読み、人にとって走るという事は自然なことであり、本来苦しいものではない、と心から理解してもらい、あなたが前向きな気持ちでランニングできる助けになると幸いです。
1.人間だれしも”走る才能“をもって生まれている
「え?私、走る才能あるんですか?」
そうです、才能あります。
それを証明する仮説としてまず、「人間は、長距離走るために進化した」という研究結果があります。
人類が農耕・牧畜で定住生活を送ることになったのはわずか約1万年前のことで、20万年の人類の歴史の中でヒトは大半の時間を人類が生き残った理由として狩猟採集で生きてきたのです。
つまり、ヒトは2足歩行に進化した上で、長距離走り続けて獲物を捕らえれることができたので繁栄できたという仮説です。
実際、今でも狩猟採集生活をしているアフリカの部族を調査したところによると、狩りでは、平均時速 10 ㎞前後で約 35 ㎞、獲物を追走しています。狩猟民でなくても、ヒトは電車や自動車などの交通手段を持たなかったつい最近まで、時速 6㎞以上の速度で移動することを日常茶飯事としていたはずです。
人類の歴史の大半の時間において、ランニングはウォーキングとともに主要な移動様式であったことでしょう。
つまり、ヒトは皆、生まれながらにして長距離を走る能力を持つのです。
2.ランニングスキルはオリンピック選手もあなたも同じ
「私が大迫傑選手と同じランニングスキルを持っているなんてあり得ない。」
そう思うのも無理はありません。私たちはキロ4分でも必死なのに、彼らはキロ3分ペースでフルマラソンを走り切るのですから。
ただ、エネルギー消費量を比較したデータからは見方が変わります。
ランニングのスキルが高いということは、エネルギー効率よく走れるということなので、同じスピードで走るときの消費カロリーは少なくてすみます。
その調査結果を見ると、オリンピック選手は一般人に比べて少ない消費カロリーで走れていますが、その差はわずか 5%に留まるのです。
すなわち、大迫傑選手を100点とすると、普段ランニングをまったくしていない方も、 95点をとれてしまうことになります。
これは、他のスポーツのスキルと大きく異なる属性です。例えばテニスをしている方であれば、錦織圭選手を100点とすると何点になるでしょうか?野球で言えばダルビッシュ有選手を100点とすれば何点になるでしょうか?
おそらく多くの方が、10点や 20点くらいと答えるでしょう。しかしランニングのスキルは、少しコツを押さえるだけで、一般人でもオリンピック選手とさほど変わらない点数がとれてしまうのです。
ちょっと夢のあるデータですよね。
3.歩くことはできるけど、走る事はできない
「それでも歩くのはいいけど、走るのはちょっと…」
走る能力があって、大迫傑選手並みのエネルギー効率で走れたとしても、やっぱり走るのは辛いって声が聞こえてきます。確かに走るのは辛いです。
ではそもそも「ウォーキングとランニングの違い」について考えていきたいと思います。それと同時に、「走る意味」についても理論的に考えていきます。
ウォーキングとランニングの違い
ご存知の通り身体の使い方の違いで、ウォーキングは左右どちらかの足が必ず地面に接しており、ランニングは左右の足の両方が瞬間的にも地面から離れて浮いている時間が存在します。
つまり、速さは関係なく、足の動かし方で区分されています。
その典型として競歩選手の歩く速さは時速16㎞にもなり、フルマラソン換算で2時間40分を切ります。尋常じゃない速さですね。
ただ一般の方の日常生活において、ゆっくり歩きが時速3㎞、通勤時が時速5㎞です。また健康づくりのためのエクササイズウォーキングで時速7㎞程度になり、この辺りの速度が限界で時速8㎞で歩く人はまずいません。
では、私たちが無意識に走り出すスピードはどれくらいでしょうか。
福岡大学のスポーツ科学部を対象に調べてみました。トレッドミルで時速3㎞から徐々にスピードを上げていくと、時速5㎞を超えたところで走り出す人がでてきます。平均すると時速6.3㎞。時速7㎞まで歩き続ける人はごく少数でした。(ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニングより)
次になぜ私たちが無意識にランニングに切り替わるか考えていきます。
ランニングに切り替わる意味
「速度が上がれば速く進めるランニングに切り替えた方が楽だから」これは、半分正解です。しかし正しくは、
「時速8㎞辺りでランニングよりウォーキングのエネルギー消費量か上回るから」が正解です。さらに詳細を知りたい方は下記記事を読んでください。
リンク
運動1時間辺りのエネルギー消費量の相関図です。
ウォーキングは時速5㎞を超えると、エネルギー消費量が2次関数的に急増し、その一方ランニングは速度に応じて一定の割合で増えていきます。
ランニングとウォーキングのエネルギー消費量が同等になった瞬間、つまり、走りの速さは関係なく、効率的に動くため勝手にランニングに切り替わるのです。
私たちは皆、無意識に効率的に生きているのです。
このデータから読み取れる情報として大切なことは、
ランニングは移動1㎞あたりのエネルギー消費量は一定
であるということです。つまり時速8㎞で走ろうが、時速16㎞で走ろうが、距離でみると、身体のエネルギー消費量は変わらないということです。
それって…
フルマラソンでサブフォーでもサブスリーでも同じエネルギー消費量という事です。これについては下記記事で詳細に書いています。
リンク
だからこそ、走る速さは関係ない=スロージョギングで距離を走る事に価値があるという事がわかります。
4.スロージョギングのススメ
ここまでの理論でわかる通り、「速さは関係なく、同じ距離であれば一定のエネルギー消費量である」という事を拡大解釈すれば、
「ゆっくりでもマラソンを完走できるようになれば、その時点でサブスリーは走れる」という事です。
エネルギー消費量は変わらないのですから。あとは走りの5%を磨き上げていけばよいのです。ではなぜスロージョギングをススメるかを改めて言うと、楽にエネルギーを消費出来るからです。
ゆっくりでも速く走ったときと同じエネルギー消費量ですね。
痩せるためには速く走る必要はない、という事の証明にもなります。
最期にスロージョギングのコツを紹介します。
スロージョギングとは歩くくらい低速で走る事であり、実施するときの大事なポイントを2つ押さえておきましょう。
①辛いと全く感じないスピードで走る事
②歩幅を狭くして出来る限りピッチを高く刻む事
①は当たり前なんですが、いざ走ってみると低速で走り続けるのは非常に難しいです。それはどうしてもスピードを出したくなるという心理です。ここは敢えて、早くても遅くてもエネルギー消費量は同じと心の中で復唱してぐっと抑えましょう。
速くなるとそれだけ長く走る事が難しくなりますので。
次に②の理由は、速く走る時と足の運びを同等にする為です。
ゆっくり走ってもピッチは小刻みに足を動かし、速く走る時と出来る限り同じように意識すれば、そのままスピードを出しても同じフォームになります。
最期に
走る事が苦手だと思っているあなたには非常に大きな可能性を秘めています。少なくともあなたは走る才能を既にもっています。
最初はほんとに本当にゆっくりで良いので、ぜひスロージョギングを習慣化してみてください。それがフルマラソン完走並びにサブスリー達成までの最短ルートかもしれません。
参考文書
ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3W69DD/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
サブ2.5医師が教える マラソン自己ベスト最速達成メソッド